1、ホルモンによる卵形成制御

マダニの卵形成において、卵黄タンパク質前駆体Vitellogenin (Vg)の合成は脱皮ホルモンEcdysteroidによって直接制御されると考えられています。昆虫種の研究から、Vgの発現はEcdysteroid及びEcdysteroid receptor (EcR), そのパートナーのRetinoid X receptor (RXR)が複合体を形成し、Vgの転写制御を行うことが明らかになっており(図1)、マダニも同様だと考えられていています。

マダニのEcR、RXRを同定したところ、甲殻類に近いことが明らかになりました(図2)。

マダニは交尾・未交尾雌ともに吸血することが可能ですが、成熟卵を産卵するのは交尾雌のみで、 未交尾雌では途中で停止します(図3)。

交尾・未交尾雌におけるEcR、RXRの発現及びEcdysteroid量を測定したところ、EcR、RXRの発現は両者でほぼ同様ですが、交尾雌のみで高いEcdysteroid量が検出されました(図4)。

この事から、EcdysteroidによってVg合成やその後の卵形成が制御されると考えられます。現在は、この機構をさらに詳しく解明するために研究を行っています。