3、抗微生物物質Defensin

免疫の研究は抗体反応を主とした特異的な獲得性免疫に焦点が当てられてきました。

近年、感染初期に働き広範な微生物に対して防御機能を示す自然免疫が注目されています。マダニの体内では自然免疫が働きますが、にも関わらず非常に広いレンジの病原を媒介します。

自然免疫のなかで、液性免疫に含まれる抗微生物ペプチドはマダニ自身の病気の予防に大きな役割を 果たします。私たちはマダニから抗微生物ペプチドDefensinの単離に成功しました。

このDefensinは吸血後に発現が上昇し(図5)、ダニ自らの感染を防いでいると考えられます。

Defensinはグラム陽性細菌に非常に効果を示し、MRSAなど多剤耐性細菌に対しても

強い殺作用を示します(表1)。

また、昆虫のDefensinと比べても低い濃度で活性を示しますが、一方で哺乳類の血球などには毒性を示しません(表2)。

その作用は微生物の膜を破壊するという全く新しいメカニズムです(図6)。

このようにマダニから得られた新規有用物質としてDefensinに注目し、その制御機構や働きに注目しています。